「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」が流行ってますね。20代から投資を20年くらいコツコツ積み上げていけば”複利・利息の力”で40代になる頃には早期退職できる位の財産ができるらしいです。最近知りました。私はもう既に40半ば、今から初めても達成は60代後半。
普通に定年退職の年齢になってしまう。完全に手遅れって感じですね(笑)
まだ20代や30代前半でこれから、「FIRE」を目指せる人達は心底羨ましいな、と思います。
反面、「本当にそんな事できるの?」というモヤモヤした気分になるのも正直あります。
自分が、これまで何を目指してきて、何故FIREにモヤモヤしたものを感じるのか、その上でこれからどうするのかを考えてみたいと思います。
目次
氷河期世代の価値観の源流と目指してきたもの
2000年代前半に社会人になった私は、当時直面した「就職氷河期」と「老後年金問題」によって、社会人人生の方向性を決めてきたのでは無いかと思います。
「就職氷河期問題」
就職氷河期とは、バブル崩壊を発端に1993~2004年に起こった就職難のことです。
不景気を理由に企業が新卒採用を絞った結果、求人倍率が下がり、大学を卒業しても就職できなかった人々が非正規雇用として働かざるを得ないという状況になりました。
それに伴い失業者が増え、完全失業率が上がりました。
その後、中国や東南アジアの新興国ブームや、不動産プチバブルで雇用環境が改善されたように思いますが、2008年にリーマンショックが起こり派遣切りや会社の倒産での失業のニュースに戦慄した記憶があります。
この世代は「失われた世代=ロストジェネレーション」と呼ばれている訳ですが、新卒時期には何十社とエントリーシートを出してやっと就職できたというトラウマ、そして少し落ち着いた頃に起こったリーマンショックで再び奈落の底に落とされ、正社員の立場を維持できている自分に安心感を覚えるという体験をしてきました。
会社員・正社員の地位が人生の安全弁として機能した事を何度も実感した世代は、他の世代に比べて執着・愛着を持っているのでは無いかと思います。
老後年金問題
年金制度は、平成16年(2004年)に大きく改正されました。
キャッチコピーは「100年安心」ということで、厚生労働省が年金財政の検証(年金支出と国庫負とい担を含む年金保険料の収支推計)をおおむね100年間行うことを由来としていました。
「100年安心」などとわざわざ掲げられたのは、実際には非常に心配な状況にあったからです。当時年金未納が大きな問題として取り上げられ、国民の間で年金制度は破綻する、老後の生活は生活が破綻するのでは無いかというムードが広がっていました。
タレントが若者に年金納付を呼びかけるCMが盛んに流れていたり、タレントや政治家の年金未納が発覚すると、それがスキャンダルとしてニュースを賑わしていた社会背景がありました。
当時は、1990年のバブル崩壊を引きずっての就職氷河期。不動産はバブル崩壊で地価が大幅に値下がり、金融機関は不良債権問題を引きずり統廃合を繰り返しているような時代でした。当時の大半の一般人にとって株式であれ不動産であれ「投資はギャンブル」という感覚は残っており、今に比べてかなり敷居が高かった印象です。
そんな中で起こった「老後年金問題」は人々に「将来のお金対策」の必要性を突きつけました。特に年金の受給開始まで先が見えない若い世代の中に「自分年金」といった形で投資・資産運用を意識しだした人も出だしのでは無いかと思います。
その意味でこの時期に資産運用を始めた氷河期世代にとって、投資のゴールを「老後」を設定する考え方は自然であった気がします。逆に言えば、老後まで、つまり定年までは働き続ける、という人生設計が自然にあったのでは無いかと思います。
「FIRE」の歴史とモヤモヤの正体
資産運用を始めた瞬間から、ゴール設定を「老後資金」では無く「FIRE」にしていれば、人生が変わっていたかもしれませんが、その当時はそんな事は全く考えていませんでしたorz
そもそも「FIRE」の概念はいつ頃生まれたのでしょうか?
また、私が「FIRE」に前のめりになりきれないモヤモヤの正体についても考えてみました。
「FIRE」の歴史
「FIRE」という言葉を聞き出しのはこの1~2年の事かも。そもそもいつ頃から流行っていたのかな?と思って調べていたら、”いちこう”さんという方のブログで紹介されていました。
それによると、1992年2月に発売された「Your Money or Your Life」(著:ヴィッキー・ロビンさん、ジョー・ドミンゲスさん)がFIREのルーツとされ、その発売から約20年後、カナダでソフトウェア・エンジニアリングとして働いていたPete Adeney(ピート・アデニー)さんが20万ドルの家と60万ドルの資産を元手に30歳の若さで「FIRE」を達成した事をブログで紹介した事で、2010年代、FIREというライフスタイルは大きな注目を集めたようです。
2010年代は株式市場も好調で「FIRE」の考え方が広がり、2020年頃に日本に広がってきたそうです。
考え方としては、かなり歴史があり、いち早くこの考え方を取り入れて来た人達は、丁度私と同世代(40代前後)で続々と「FIRE」達成!となっている訳ですね。
モヤモヤの正体
「FIRE」に感じるモヤモヤの正体。素人でも一定の資産運用が可能であるという「右肩上がりの経済」を人生設計の前提にする危うさにあると感じています。
特に、私はバブル崩壊と就職氷河期を経験したロスジェネ世代です。仮に「FIRE」で”Retire Early”したとしても、景気が悪化して資産が目減りする。その結果生活が破綻するのでは無いか、という不安が頭の片隅をチラつきます。
アセットマネジメントONEのWEBサイト「わらしべ瓦版」に以下のような記事が掲載されていました。
FIREの達成条件を具体例で見てみましょう。例えば、今後生活していくために年間300万円必要で、運用利回りを年率4%と仮定するなら、必要な資産額は「300万円÷0.04=7,500万円」と計算できます(※計算を分かりやすくするため、ここでは運用にかかる手数料や税金等は考慮していません)。このため、7,500万円を築くことができれば、計算上は築いた資産を取り崩すことなく運用益だけで生涯生活することが可能となり、いつ早期退職してもよい状態となります。
一方で、運用利回りについては特に注意すべきポイントとして挙げられます。上記の例で言うと、7,500万円を取り崩さないためには、常に4%という一定の利回りを達成し続けなければなりません。要するに「ある年は0%、翌年は8%で平均4%」といったいわゆる「リスクのある運用」では必ずしも資産を減らさずにいられるとは限らないということです。
FIREを目指す方のブログ等を拝見すると、4%の利回りは過去の株式指標のトラックレコードを見ると無理なく達成できる数字というコメントも拝見します。
しかし、あくまで「過去の」トラックレコードです。これからの保証はありません。また、流行した時期の2010年 ~2020年代といえば、日本で言えばアベノミクス、アメリカではトランプ政権時代からコロナ危機対策での金融緩和政策で株式市場に強烈に追い風が吹いていた時代です。その時に良い思いをした人達が「FIRE」を達成できたとしても、これから目指す人達に同じような追い風が吹くかは分からない、という所に若干バブル時代のイケイケな雰囲気を感じてブレーキがかかってしまう気がします。
就職氷河期、リーマンショック、東日本大震災、コロナショックと、この20年間何度も「ショック」を目の当たりにしてきた経験から、会社という安全弁を外して、その後の人生を自分の計画通りにコントロールしていくという「FIRE」という生き方を肯定しきれないモヤモヤを感じているのだと思います。
結局これからどうするのか?
結論、当初の予定通りまずは定年まで働いて、それまでに老後資金を貯める事を目指すのが無難かなと思っています。
最近シニア世代の方が第一線で働く風景をよく見かけるようになった気がします。
「FIRE」を達成した人達の1億円貯めたとか不労所得で年間数百万円稼ぐといった武勇伝はとても真似できる気がしません。
サラリーマンとして約20年過ごしてしまった自分には、寧ろ定年後も再雇用されているシニア世代のように、生涯現役で稼ぎ続けていくような生き方がしっくりきてしまうのです。
「サラリーマン」を勤め上げた後の風景
皆さんの周りにも最近70代・80代のシニアの方で活躍されている方多くないですか?
いま一度「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」の言葉を見直してみましょう。
70代・80代で活躍されているシニアの方は少なくとも、「FIRE」の後半Retire Early(早期離職)では無いですね。一方で、前半、Financial Independence(経済的自立)はどうでしょう?
70代になれば子育ても終わり、住宅ローンも終わり、年金を貰う権利もある、現役真っ盛りの40代の私と同等かそれ以上の給料を会社から貰えるという状況です。「本当は働か無くても良いんだけどさ」とか言っているのを聞くと、お金に困ってはいなさそうです。これってある意味「経済的自立」の達成ではないでしょうか。
まとめ
今の自分の人生観を整理すると以下のような感じかな、と思います。
これがベストの選択かどうかは、実際にゴールを迎えてみないと分からないですね。
・就職氷河期の自分は就職できるかどうかの瀬戸際で社会人人生を開始し、その後経験する何回かの「●●ショック」で景気が悪化した時に会社に守られてきた
→会社員の恩恵を最大限活用したいと骨の髄から思っている
・始めて接した”資産運用”の概念は「老後年金問題」
→資産運用のゴールは、せいぜい年金”+α”を目指す安定志向。
リタイア資金●億円を稼ぐような大胆な投資スタイルにはとてもついて行けない
・この先どうなるか分からない
→将来に対するリスクは、「会社員」のポジションを維持する事でヘッジする事が人生戦略!
ちょっと日和見過ぎる気もするな~。
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